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2015年6月1日月曜日

【連載小説】 泪色ヘヴン 【6】

バックナンバーはこちら! ◯第1話 【1】 【2】 【3】 ◯第2話 【4】 【5】

第2話の後編です!!

機動兵器 「シンケルハン5号機 -桔梗-」 に乗せられるアマナ。
彼女は何の事情も知らないまま、いきなり前線に送り込まれます。

一方、ステーションには虚数空間を展開するエンジェルが襲来。
ラズリ小隊とセンは、その撃退に向かいますが……!!

SFバトルが激しさを増していきます!!

一更新、原稿用紙20枚ほどなのでお気軽にお楽しみくださいね!




201504200034



また、フレンドのそらさんから、OPテーマやBGMをご提供いただきました!!

※右クリック→対象をファイルで保存

【OP曲-悲しみのロストヘヴン】
mp3 ダウンロード

【BGM-宇宙に暮らす人々】
mp3 ダウンロード

併せてお楽しみください!!



[泪色ヘヴン] [6]

(第2話 虚数空間 後編)



「エンジェル、あと四十秒で第六時防衛ラインに接敵します」
「強力な自己領域の干渉を確認。ナノマシンフィールドの濃度、計測不能です!」
「ビーコンからの映像が次々に消えています! 三百六十番台も通信途絶!」

悲鳴のようなナビゲーター達の声を聞きながら、司令官席に座ったアンジェロが声を上げる。

「出せるビーコンは全て射出するんだ! 敵の情報を確認できなければ、対策も立てられない」
「ラピス・ラズリ小隊、シンケルハン1号機から4号機、発進準備完了しました。第八カタパルトに輸送中です」
「5号機は?」

モニターから目を離さずアンジェロが問いかけると、傍らでパネルを操作していたナビゲーターが口を開いた。

「アマナ准将の搭乗は確認しましたが、システムが起動しません」
「やはりか……!」

アンジェロが歯噛みしてパネルを操作する。
そこにセンの顔が浮かび上がった。

「ハンウチ。5号機が起動しないぞ」
『構わん。そのまま他の四機と射出しろ』
「何を言っている! お前、あの子は……」

アンジェロが席から腰を浮かせて大声を上げる。
周囲が驚いたように彼に視線を向け、アンジェロは息をついて席に腰を落ち着かせた。

『大丈夫だ。桔梗は起動する』

センが通信越しにそう言うのを聞き、アンジェロは声音を落として彼に聞いた。

「何故そう言い切れる? あの機体は、小隊の誰も起動できなかったんだぞ。能力者でもない者に動かせるわけがない」
『動かせる。そういう風に作ったんだ』

センはそう言って、静かにアンジェロに言った。

『歌が聞こえる。かなり近くまで来ているようだ。撃退しないと、全員死ぬぞ。議論は後だ』
「……分かった。信じていいんだな?」
『信じろとは言わない。ただ、結果は出るはずだ。全てのバイタルラインの記録だけはしておいてくれ』

センがそう言い残して通信を切る。
アンジェロは小さく舌打ちをして、モニターに映しだされたエンジェルを見た。
今度の個体は小さかった。
真っ白い、エンドラハンに似た形のマネキン人形のようなものだった。
のっぺらぼうの顔面に3つの穴が空いていて、やけに猫背だ。
背中には金色に輝く翼が四枚二対、合計八枚はためいている。
大きさは、推定するに二十メートル前後。
エンジェルにしては小型だが、人間から見ると巨人だ。
エンジェルは身じろぎ一つせずに、ゆっくりと宇宙空間をこちらに進んできている。

「ビーコン、四百番台の全ての通信が途絶しました!」

メインモニターの左側の映像が全て消えた。

「くそ……どうなってるんだ……」

歯噛みしてアンジェロが呟く。
ビーコンとは、宇宙空間に放流して映像を流す小さな機械だ。
数万個がステーションの外部に設置されている。
それが、エンジェルが近づいた端から機能を停止して映像送信を途絶しているのだ。
既に半分以上のビーコンの映像が消えている。
映像が来ないということは、状況が確認できないということ。
アンジェロは冷や汗を拭いながら、モニターに表示されたラズリ小隊の四人に言った。

「敵エンジェルの接敵が確認されている。不用意に近づかないように。射出後、君達はバーウルフ将補の指示に従い、5号機の補助をしつつ、エンドラハンのバックアップ。繰り返す、不用意に近づくな」
『了解』

クリステンが頷く。
しかしミナモが不服そうに声を上げた。

『司令、五号機はまだ整備中だったはずです。パイロットは誰ですか?』
「アマナ・クルツ・フォード准将だ。初戦になる」

端的に返したアンジェロに、小隊の全員が唖然とした顔を向けた。

『そんな! 戦闘ですよ? まだ配属もされてない新人に、いきなり前線を任せるんですか?』

大声を上げたミナモに、アンジェロは淡々と言った。

「シンケルハンの起動準備にかかりたまえ。議論している余地も、君たちの不服を聞いている時間もない。エンジェルを倒せなければ、全員が死ぬ。それくらいは理解できないか? ジルビーン一佐」

静かに言われ、ミナモは言葉を飲み込んで悔しそうに顔を歪めた。

「シンケンルハン1号機から4号機、起動を確認しました。射出シークエンスに入ります」
「司令! 5号機のシステムが一切立ち上がっていません! このまま射出していいのですか?」

ナビゲーターが声を上げる。
アンジェロは少し考え、息をついた。
そして口を開く。

「構わん。出せ」


歌が聞こえる。
あの日聴いた歌が。
あの日亡くした歌が。
聞こえる。


「エンドラハン、起動シークエンス作動。全ての設定制御をニュートラルへ」

格納庫に鎮座しているエンドラハンのカメラアイが、青く光った。

『起動シークエンス作動。当機ナビゲーター0087と確認。マニュアル88に従い、起動します』
「量子転送開始。格納しろ」
『了解。ナビゲーターの当機コックピットへの量子転送を認証します。システムエンゲージ。当機エンドラハンは戦闘行動プログラムを始動します』

センの体が掻き消え、次の瞬間彼は、緑色の液体が満たされた円形の空間……エンドラハンのコクピット内に浮かんでいた。
コードが伸びてきて、彼の首筋に針を指し、プシッと何かを注入する。
体中に針を接続された状態で、センは口を開いた。

「長距離ジャンプシークエンスを開始。座標二千八百。一万二千、三千九十五、二十万八十九……」
『了解。長距離量子転送を開始します』

エンドラハン全体が白く輝き、フワッ、という小さな風とともにそれが消える。
一瞬後、センを積んだ人型兵器はステーションからかなり離れた宇宙空間に浮かんでいた。

『エネルギー効率がダウンしています。ナノマシン濃度450%。緊急マニュアルに従い、当機の自己領域を展開しました。残存活動時間、三百六十秒です』

ナビゲートAIの声を聞きながら、センはモニターの先で、ゆっくりこちらに向けて進んでくる「天使」を見た。

「オズマ級か……厄介なものを……」
『ハンウチ、ラズリ小隊があと二十秒でその宙域に到達する。いいのか? 5号機も出したぞ!』
「構わない。通信回線を開いてくれ。以後小隊の指揮は俺がとる」

エンジェルは、エンドラハンの姿を確認したのか、その場にゆっくりと静止した。
センはしばらくそれを睨みつけていたが、やがてエンドラハンのブースターをふかして後退りするように後退した。

「敵対フィールドの展開空間から離脱しました。自己領域の稼働効率を下げます」
「そのまま維持しろ」
「了解」

AIに命令してから、彼は後ろからブースターを点火してこちらに高速で接近してくる機械人形に目をやった。
大きさはエンドラハンとほぼ同じ。
色がついていて、青、赤、緑、黄色……そして動く気配を見せない紫の機体が、赤い機体に抱えられていた。
形は同じようなマネキン型だったが、それぞれ持っている武装が違う。
銃火器をこれでもかと積んでいるものがあれば、エンドラハンのようにほとんど何も積んでいない機体もある。
一様に共通しているのは、無骨な機械の外見をしているということだった。
モニターに表示された、緊張した面持ちのラズリ小隊の四人を一瞥してから、センは口を開いた。

「距離五百二十をとれ。それが敵の自己領域展開距離だ」
『特佐、アマナ准将の機体から応答がありません! 起動していない様子なんですが……!』

赤い機体、シンケルハン1号機に乗ったクリステンが声を上げる。
戦闘機のコクピットのようなところに押し込められ、パニックになったように計器をいじっているアマナの姿がモニターに映し出される。
他のシンケルハンのコクピットも、そのような戦闘機のような操縦席になっているようだ。
センは静かに口を開いた。

「アマナ准将、内部通信回路から呼びかけてる。その機体は君の神経回路に作用して起動する。マニュアルをなぞった操作では十分に動かない」
『ハンウチ特佐! どういうことですか? 私は、まだこれを動かす訓練は何も……』

悲鳴のような声を上げたアマナに、センは言った。

「どうせ俺たちがエンジェルを止められなければ、君は死ぬ。人を、守るために軍に入ったんじゃないのか? なら動かせる。起動させるんだ」
『無理よセン! だって5号機は、私達誰も動かせなかったじゃない!』

ミナモが咎めるように大声を上げる。
センはそれを無視して、操縦桿を握ったアマナに向けて続けた。

「そうだ。落ち着いて神経回路をナノネットワークを通じて接続するんだ。それは戦闘機ではない。『鎧』だ。君を守り、君の意思どおりに動く、最大最強の鎧、そして槍だ」
『えっ……』

アマナの周囲のパネルに次々と明かりが点灯していく。
アマナは過呼吸に陥ったように荒く息を吐きながら、目を見開いて歯を噛み締めた。

『私……これ……』
「…………」
『どうして……? 知ってる……』

紫色のシンケルハン、5号機のカメラアイが点灯し、その背部ブースターがものすごい勢いで点火した。

『きゃあああ!』

悲鳴を上げながら、突然の急速で5号機がエンジェルに向けて吹き飛んだ。

『しまった! アマナ准将!』

クリステンが叫んで、慌てて1号機のブースターを点火させてアマナを追う。

「各機、アマナを援護しろ」

センはそう言って、エンドラハンを動かして、エンジェルに向かって突進していくアマナの機体を追った。

『特佐! 機体が止まらな……』
「自己領域を展開するんだ。そのままでは君の機体は、敵の領域に飲み込まれて消滅する」

センが静かに言う。

『どういうこと?』

ミナモが口を挟むと、彼は端的に答えた。

「あのエンジェルのアギトは、おそらく虚数空間だ。展開しているフィールドに入ったモノを、虚数空間に転送してしまう能力だ。お前達も領域を展開して身を守れ。死ぬぞ」
『やり方がわからないんですよ!』

アマナが、止まらない機体の中で絶叫する。
センは小さく笑ってからそれに答えた。

「念じればいい。自己領域、アギト能力の展開は誰に教えられるものでもない。自分が本能的に防衛のために使う力だ。だから、君はできる。逆に言おうか? 展開しなかったら、君は死ぬ」
『私が……死ぬ……?』

アマナの顔から血の気が引いた。

『セン、いくらなんでも無理よ! 止めてあげて!』

ミナモが5号機を追いながら悲鳴のような声を上げる。
その時だった。
アマナの見開いた瞳が、不意に鈍い金色に光り始めた。
彼女は先程まで狼狽していたとは思えない動きで操縦桿を動かし、一気に突進していた機体の態勢を立て直した。
ブースターを逆噴射させて機体を急停止させる。
その5号機の肩部分がバクンッと音を立てて開き、銀色のモヤのようなものが噴出された。

「そうだ、それでいい」
『ウソ……』

呟いたセンと、呆然と機体を停止させたミナモ達の前で、両手を広げて周囲に銀色のモヤをまき散らしている5号機の体躯が、白く輝き始めた。
もはや目と鼻の先に迫っていたエンジェルが、そこで動きを止めた。
バヂバヂと音を立てて、シンケルハン5号機とエンジェルの間に、白い稲妻のような衝撃波が飛び散っている。

『各機、衝撃に備えてください。「武装」を使用します!』

アマナがそこで、不意にハッキリとした声で叫んだ。
5号機の体中の装甲がバクンッと開き、内部に格納されていた白い球体が、一気に赤く光り始めた。

「異常な力場を感知。重力指数が急激に増大していきます」

AIのナビゲートを聞きながら、センはニィ、と小さく笑った。
エンジェルが突然、体中を痙攣させて震え始めた。
その体がベコベコとプラスチックのように凹み始める。
手をのばそうとしたエンジェルの、その右腕が紙のように潰れた。
足も、頭も同様に緑色の液体を噴出しながら潰れていく。

『な……何が……』

ジャスティンが小さく声を上げる。

「重力の流れを変えているんだ。そういう能力なんだろう」

センは小さくそれに答えてから、AIに言った。

「エンドラハンジェノサイダーを起動する」
「了解。エンドラハンジェノサイダーを起動。アギトコンデンサーを全段直結。変換率三千九十五。全ての設定をオートに切り替えます」

エンドラハンの周囲が白く光り、その右手に収束する。
そして一瞬後、巨大な砲身を形作った。

『くっ……!』

そこで通信の先でアマナが苦しそうに息をつき、頭を振った。
その鼻から一筋鼻血が垂れる。
途端に5号機の光は収まり、力場が消えたのか、解放されたエンジェルがのけぞるように体を動かし……。
空気がない宇宙空間でも伝わるほどの、とてつもない「絶叫」を上げた。

『いけない……!』

クリステンが小さく声を上げ、シンケルハン1号機のブースターをふかして、体躯から白い煙を噴出して崩れ落ちたアマナの5号機と、エンジェルの前に立ちはだかる。

『全機俺の後ろに! イージスの盾を起動する!』

赤いシンケルハンが右手をエンジェルに向ける。
その腕の装甲が開き、中の白い球体が赤く光った。
エンジェルの絶叫により発生した巨大な衝撃波が、1号機に突き刺さる瞬間……それは見えない壁に阻まれたかのように、二つに分かれて後方に吹き飛んだ。
衝撃波を防いだ1号機の右腕から、白い煙が上がっている。
エンジェルは途端に、巨体に見えない俊敏な動きで1号機の頭を掴み、振りかぶって5号機に向けて投げつけた。
たまらず吹き飛んだクリステンの機体がアマナの機体に衝突して火花を散らす。
吹き飛んできた二機を、青い機体……3号機、ジャスティンのシンケルハンと、黄色い機体、ミィの2号機が掴んで止めた。

『ジルビーン、止めろ!』

クリステンが大声を上げる。

『分かってるわよ!』

ミナモがそれに大声で返し、機体が額の白い球体を赤く光らせてエンジェルに接近した。
緑色の4号機である。
その両手を向けられたエンジェルが、不意に映像を停止させたかのように、凍ってしまっているかのごとく動きを止めた。

「よくやった。これでラストだ」

センがそう言って、照準を合わせて引き金を引く。
巨大な砲身から吹き上がった熱波は、動きが止まったエンジェルに突き刺さり、その向こう側に抜けて消えていった。


「……どういうことだ? 人間上がりのパイロットではなかったのか?」

ミーティング室で、アンジェロとセンが戦闘記録の映像を繰り返し見ていた。
アマナの5号機が発生させた力場のところで映像を止め、アンジェロは続けた。

「元老院は、もしかして……」
「ああ。『成功』しているな。これは、完全体だ」
「馬鹿な! お前が十五年かけても作れなかったんだぞ!」

アンジェロが声を上げたのを、片手をあげて制止し、センは息をついた。

「この件は、俺やお前が考えている以上に根が深いのかもしれない。もう少し様子を見よう」
「それはいいが……ハンウチ、お前……」
「…………」
「何を考えている?」

問いかけられ、センは息をついてから言った。

「……あの子には、歌が聞こえていないようだ」
「…………」

沈黙を返したアンジェロに、センは小さく続けた。

「本当に、亡くしてしまったようだ」


アマナは、自室のベッドに仰向けになり横たわっていた。
そして天井を見上げる。
その手には、渡されたハンドガン。
ホルスターから抜き、握る。
そこでカショ、と音がして撃鉄が上がった。
目を見開いたアマナの前で、六発の銃弾が装填されたハンドガンの安全装置が、一人でにスライドして解除されたのだった。



[泪色ヘヴン] [7] に続く!! 

to be continued...!! 



【編集後記】

機動兵器シンケルハンの各ナンバーとパイロットはこちらです!

・シンケルハン1号機(赤):クリステン・バーウルフ将補
・シンケルハン2号機(黄):ミィ・アダミナス一佐
・シンケルハン3号機(青):ジャスティン・ハバーナ一佐
・シンケルハン4号機(緑):ミナモ・ジルビーン一佐
・シンケルハン5号機(紫):アマナ・クルツ・フォード准将



シンケルハンの5号機を動かし、重力を操ったアマナ。
彼女はその動かし方を、本能的に知っていたようですが……。

いろいろな思惑が交錯する中、セン暗殺用の銃……。
その安全装置がひとりでに解除されます。




怒涛の第三話に続く!

ご意見、ご感想などお待ちしています!!

次回の更新は不定期ですが、早いうちに上げます!
お楽しみに!! ٩( 'ω' )و



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